■ホンダ・ダックスの歴史
ダックス(DAX)とは、本田技研工業が製造販売していたオートバイであり、シリーズ車種として数車種が生産されていたが、現在は全て販売終了している。
●1969年 ダックス発売
ダックスは1969年8月に発売された。当初はダックス ホンダST50/70という車名を付けられ、当時のスーパーカブに用いられていたエンジンを流用した50ccと70ccの2車種が発売されている。ミニバイクの中でも小柄な車体は低重心で長いホイールベースであり、そのネーミングどおり胴長短足の猟犬ダックスフントを連想させる物となっている。
この構造上の特性は、モンキーと比較してより不整地での使用を想定したモデルであり、着脱可能な前輪や横倒しにしても洩れないガソリンタンクなどの機構を備えており、車載が可能なレジャーバイクというコンセプトをアピールしていた。また、自動遠心クラッチを採用し、初心者にも簡単にギアチェンジできる仕様となっている。
●1971年 ダックス・SPORT-Ⅰ
1971年にはグレードも追加設定され、3速自動遠心クラッチモデルの「オリジナル」と「エクスポート」の他に、クラッチ付4速ミッションを装備した「スポーツI」が登場。
折り畳み式のハンドルからブレースバー付きの固定ハンドルに変更して強度を高め、タイヤ幅を3.50サイズから4.00サイズに変更して走破性を向上させている。
ダックス SPORT-I
50cc ¥84,000 発売 '71/02/10
70cc ¥87,000 発売 '71/02/10
(ST50K1-4/ST70K1-4)
●1972年 ダックス・SPORT-Ⅱ
1972年には、走行性能をさらに高めた「スポーツII」が登場。
フロントにオイルダンバー式ショックアブソーバー、クランクケースプロテクター、ライトと分離したメーターなど充実した装備を備えている。このモデルの中に白い車体に花柄シートの「ホワイトダックス」というタイプも販売された。
1971年のグレード追加以降も、当時の流行に合わせて装備などのマイナーチェンジを続けていたが、1979年にチョッパー(アメリカン)タイプへの変更を受けた車両を最後に、国内での販売は1981年で一旦終了している。
ダックス SPORT-II
50cc ¥89,000 発売 '72/03/01
70cc ¥92,000 発売 '72/03/01
(ST50K1-5/ST70K1-5)
●ホンダ・ダックス SPORT-I/SPORT-II 主要諸元 〈 〉はSPORT-II
区分 | 50cc | 70cc | |
全長(m) | 1.600 〈1.620〉 | ||
全巾(m) | 0.630 | ||
全高(m) | 0.960 〈0.980〉 | ||
最低地上高(m) | 0.155 | ||
車量重量(kg) | 68 〈74〉 | 69 〈75〉 | |
燃費(km/L) | 80(30Km/h) | 60(50Km/h) | |
登坂能力(tanθ) | 0.28 (16°) | 0.32 (18°) | |
制動停止距離(m) | 7.0 (35Km/h) | ||
エンジン形式 | 4サイクル・OHC | ||
総排気量(cc) | 49 | 72 | |
最高出力(PS/rpm) | 4.5/9,000(JIS) | 6.0/9,000(JIS) | |
最大トルク(kg-m/rpm) | 0.37/8,000(JIS) | 0.51/7,000(JIS) | |
始動方式 | キック式 | ||
変速機形式 | 常時噛合式 | ||
一次減速比 | 4.312 (69/16) | 3.722 (67/18) | |
変速比 | 1速 | 2.692 (35/13) | |
2速 | 1.823 (31/17) | ||
3速 | 1.300 (26/20) | ||
4速 | 0.958 (23/24) | ||
二次減速比 | 2.928 (41/14) | 3.000 (45/15) | |
フレーム形式 | T型バックボーン式 | ||
タイヤサイズ | 前 | 4.00-10-2PR | |
後 | 4.00-10-2PR | ||
バッテリー | 6V2AH | ||
点火プラグ |
C-6H(NGK) U20FS(日本電装) |
C-7HS(NGK) U22FS(日本電装) |
●1972年 マイティダックスとノーティダックス
派生車種として1972年に発売されたマイティダックス(ST90)がある。
また、1973年にはダックス同様「レジャーバイク」のコンセプトで、ノーティダックス(CY50)が発売。ノーティダックスは、ダイヤモンドフレームと縦型エンジンを採用するなど車体構造は異なるものの(ダックスはプレス式のバックボーンフレームに横型エンジン)、幅広の小径タイヤを採用するレジャーバイクというコンセプトの共通性から、その車名どおりダックス・シリーズのバリエーションのひとつとされている。
ダックスのコピーバイク。排気量125ccでフロントにディスクブレーキ装備などが異なる
70ccモデルについては、発売当初から海外用車両の生産が現地などで続けられており、歴史の上ではモンキーに次ぐロングセラー車となっていたが、2003年に70ccモデルの生産も終了した。しかし人気機種であったことから、現在はいわゆる「コピーバイク」という形で生産を行っている海外企業もある。それらのモデルでは、独自の装備を追加することによりオリジナルより発展させている車両も見受けられる。
●1995年 再発売
1995年に50ccモデルの国内販売が復活。デザインは初代モデルをほぼ踏襲しており、3速自動遠心クラッチを採用。
電装品の12V化やCDI点火、メンテナンスフリー・バッテリーの採用など、電気系統に現代的な変更が加えられている。
エンジンは低回転・中回転域のトルクを重視した設定となったが、結果として出力が過去のモデルの4.1psよりもかなり低い2.6psとなり、ホンダの市販オートバイにしては劣るという印象を与えてしまったためか、評判は芳しくなく数年後に販売は終了している。
●メーカー希望小売価格 198,000円
Update 2015/01/01 Create 2010/10/10
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■ホンダ・モンキーの歴史と車体番号
モンキー(MONKEY)とは、本田技研工業が製造販売している原動機付自転車(小型レジャーバイク)の車種名。最新型の形式はJBH-AB27。姉妹車のゴリラなどと共に、総じて4MINIと呼ばれる。
■ホンダ・ゴリラの歴史と車体番号
GORILLA(ゴリラ)は1978年8月、モンキーのバリエーションモデルとして発売されました。(改良されたモンキーと同時発売)。モンキーと同様に4Miniバイクとして人気があります。